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KOKO#3 書く、読む、ボクシング

Interview with G

#3 書く、読む、ボクシング

Interview with G

かつて「ドイツで最も危険な通り」と呼ばれ、現在は若者や移民が集まる活気ある通りへと変貌した、ドイツ東部の都市ライプツィヒのアイゼンバーン通り。街の急激な変化に翻弄されながらも、一定のペースでどこか飄々と生きている人たちがいる。

第3回は、韓国にルーツを持ち、アメリカで生まれ育った小説家のG。自宅での小説の執筆、買い物、趣味のボクシングと、生活のほぼ全てをアイゼンバーン通りで過ごしているという彼女が、この場所の特殊性について語る。

「アイゼンバーン通りで一番好きな場所は、ボクシングジムかな。そこでは別に誰とも深い話をする必要はなくて、ただ一緒に体を動かせばいい。私はそれほど社交的じゃないから、そういうコミュニケーションの方が心地良く感じられるんだよね」

韓国人の両親のもとアメリカで育ったGは、大学卒業後にジャーナリストとして働いたが、あるとき全てを中断して、数ヶ月間両親のもとでひたすら本を読んで過ごした。

「目が覚めてから寝るまで、ただひたすら本を読んで、それ以外のことは何もしなかった。自分でもなぜか分からなかったけれど、あの時間によって今までの人生が全て変わってしまった」

その後、奨学金を得てベルリンに住むことになった彼女は、アメリカを離れたことで、自分育った国をよりはっきりと認識することになったと語る。Gのドイツ移住は、2016年に初のトランプ政権が誕生し、アメリカが大きく変化を迎えていた時期とも重なる。

「アメリカの急激な変化は、私にとってはちょっとショックだったけれど、この国を離れ、もしかしたら忘れることで、より深く理解できるようになるかもしれないと思ったんだ。ヨーロッパらしい自由で文化的な生活が気に入っていたから、ドイツに残ることにしたの」

そして数年のベルリン生活を経て、友人が英語教師の仕事を勧めてくれたことがきっかけで、Gはライプツィヒへと移り住んだ。

「ライプツィヒはベルリンほど英語が通じるわけではないし、基本的にドイツ語で生活することになるでしょ。それが新鮮で、刺激的なの。ドイツ語で話す時の私はちょっとまぬけな感じになるんだけど、それは自分にとって良いことでもある」

その後、小説の仕事に専念することにしたGは、毎日のほとんどの時間をアイゼンバーン通りにある自宅で過ごしている。それ以外の時間、日々の買い物や友だちと会うのも、ボクシングジムも、彼女の生活に必要な全てがアイゼンバーン通りに揃っている。

「この通りには知り合いが多すぎて、道を歩いては誰かに会って立ち話をしてる。だから用事を済ますまでにものすごく時間がかかったり、時には何のために外出したかを忘れることさえもあるよ(笑)」

そんなGの目には、この通りは文化、言語、人種、そしてさまざまな年齢の人たちが暮らす特殊な場所として映る。

「私が生まれ育ったのはアメリカだけど、見た目はどうみてもアジア系。反対に韓国に行けば、見た目は世の中に混ざることができるけど、韓国語のネイティブでないことはアクセントから分かる。私のキャラクターに変なものがいっぱい混ざっている。だからいろんな人が登場するアイゼンバーン通りは面白い。政治的、イデオロギー的なものを共有しているわけでもないけれど、同じ場所にいられる。別にロマンチックに表現したりしたくはないし、いろいろな問題を抱えているけれど、ここでの生活は気に入っているよ」

Gの住居は、アイゼンバーン通りのがやがやとしたイメージとは裏腹に、部屋が通りの反対側の中庭に面しているためとても静かだ。

「私の部屋は、屋根裏にある洞窟みたいな感じで、小説を書くのにはうってつけの環境。私はここで書くためのマシーンになって、書くために食べるし、書くために寝る。私の体も、頭も、心も、すべてが書くことのためにある。私の人生と私の仕事はここにあって、それは私にとってすごく特別なことなんだ」